自然災害リスク軽減研究センター

繰返し単純せん断試験装置(テーマ4)

設備の概要

 本設備は地盤材料の地震時の力学挙動を精密かつ簡易に計測するための単純せん断試験装置である.載荷機構にはパルスモーターとハーモニックドライブ減速機を用いており,広範なせん断ひずみ速度(0.002~0.6 %/min)での試験が可能である.また,繰り返し載荷の反転時には,ほとんどバッククラッシュが生じない.供試体寸法は直径60 mm,高さ30 mmとしており,シンウォールサンプラーで採取した自然堆積粘土での試験が無理なく実施できる.なお,せん断中の単純せん断モードを可能な限り確保するために,右下図に示すように,メンブレンを被せた供試体の外側に,供試体径と同じ内径の穴を持つ厚さ1mmのドーナツ形状の多層スリップリングを30枚積層させて設置し,供試体側面形状を等変位に拘束しながら非排水条件による定体積せん断を実施する.

繰返し単純せん断試験装置

◆せん断力容量 :2kN  
◆最大セル圧  :800kPa
◆載荷速度   :0.002~0.6%/min
◆供試体サイズ :直径60mm×高さ30mmの円柱体

研究内容例

(1)自然堆積粘土 地盤の地震時即時沈下と地震後継続沈下のメカニズム解明

 長時間にわたり繰返し大きな地震動が作用する海溝型地震の際には,盛土荷重が作用するような異方応力状態の粘土地盤では,地震時の即時的なゆすり込み沈下や残留間隙水圧消散に伴う地震後の継続圧密沈下が懸念される.しかし,東北地方太平洋沖地震において河川堤防などの盛土構造物に大変状の被害が多発したにも拘わらず,粘土基礎地盤の変形については,ほとんど検証されていない.そこで本研究では,不撹乱粘土を対象に本装置を用いて単純せん断試験を実施し,異方圧密条件下での粘土が,地震時ならびに地震後にどれだけ圧縮変形する可能性あるのか検討している.本装置は,異方応力状態下での繰返しせん断を簡易かつ適正に評価できる特性を有している.また,継続時間が長い海溝型地震を想定して,小さなひずみ振幅を繰り返すひずみ制御試験を実施している(下図参照).

 下図は様々な試験条件下での粘性土供試体の加振中ならびに加振後の沈下量の推移である.この実験から,盛土などの局部載荷を受けている粘土地盤は,地震時にも相当量の即時沈下が発生するとともに,地震後も継続して長期に亘り圧密沈下が発生する可能性があることがわかる.